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雪のよう
別に家庭環境が悪いとか、学校でいじめられてるとかそういうんじゃないけど。時々……無性に、悲しくなる。
近所の公園。滑り台の終わりで。座っていたら……いつのまにか、電灯が点いた。いつもならここで家路に着くのだけれど。今日はそのまま、膝を抱いた。
目に入った雪が、綺麗だったから。
黒い世界に、白い水玉。
あぁ俺は、これになりたいんじゃないだろうか。
雪のよう。
溶けてなくなってしまいたいのかも。
このままここにいたら、もしかしたらそうなるんじゃないだろうか。
目を閉じる。
不思議と……怖くなかった。
さわっと体に乗っかるそれは、まるで俺に同化してくれるかのように…包み込んで、優しかった。このまま俺は、
このまま……
「…大丈夫?」
雪の声だけがしていた世界が、急に止んで、傘の中。
他の声がした。
「こんなに濡れて…」
肩に積もった雪を払ってくれる、手を感じる。
誰だろう。顔を上げて、その人を見た。
「具合でも悪いの?」
知らないおじさんだった。
学生服を着た俺には、スーツを着た男の人はみんなおじさんだ。
俺はそのおじさんに、何と言っていいか分からず…ただ、見ていた。
「……こんな所にいたら、風邪引いちゃうよ?」
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