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『夏川君が...悪いんだ...』 ふざけんな。俺は悪くない。 『口にも出さない、夏川君が悪い』 出さないんじゃない、出せないんだ。 竜胆のせいだ。 『...お前が浮気すんのが悪いんだろ......』 俺の頭の隅っこで、いっつも引っかかってるそれ。 竜胆の言う事は、どうも怪しい。 本当に俺の事が好きなのかーー疑わしい。 好きだって言うんなら何で、何で...... 毎日俺が会いに行かなきゃいけないんだ? 竜胆は、特別目立つヤツでもなかった。 野球部のキャプテンでもなければ(帰宅部だし)、生徒会長でもないし。お金持ちでもなければ(知らないけど)、不良グループって訳でもない。顔はまぁ...俺はかっこいいと思ってるけど...別段モテてる訳でもないようだったし。 なのに俺は入学した時から竜胆を知ってる。 だから最近仲良くなったのに、竜胆の事をこれだけ知ってる訳だが...。 初めはクラス分けのお手紙で、名前だけ。やっぱり珍しいと思って覚えてた。どんなヤツか気なって、それから何ヶ月かは他の生徒の名札を何となく確認して歩いてた。見つけた時......まぁ、探してたマニアックな本を田舎の書店で発見するくらいの喜びは...あったかな。     
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