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〝あっちゃん〟は、俺と取手の担任。連城篤人というあまり見ないかっこいい名前を持っているくせに、ドジっ子で可愛らしい愛すべき俺らの担任。生徒からも人気が高い。〝あっちゃん〟なんて呼んでるのは…今の所、取手だけだけど。どうやら取手のお気に入りらしい。
「俺は帰ったって…言っといてくれる?」
「けどあっちゃんが…」
「どうせ文化祭の話だろ?代わりにお前がやっといてくれよ。…先生の、手伝い」
クラスの文化祭委員を一応やっている俺だが、その役得(?)を、取手に譲る。
「え、いいのか」
「いいよ。俺〝あっちゃん〟には興味ないし」
クラスの推薦で勝手に決められた代表だ。俺はやる気なかったし、何より夏川君優先。
「先生にもそう言っといて。取手に役を譲るって」
取手は困ったような…けれど安心したような顔で、
「……分かったよ、伝えとく。それと、邪魔して…悪かった」
「あぁ、ホントに」
「ってかこんなトコであんなコトしてる奴が悪いだろっ」
「……だな」
そういやそうだ。ここが学校だと言う事を忘れてた。
いつもそう。夏川君しか…見えなくなる。
俺は笑って手を振った。
まだ間に合うかなぁ。意外と足の速い夏川君を、
俺は嬉々として、追いかける事にする。
校外だった。
「夏川君!」
立ち止まり、背中を震わせる…夏川君。
「…遅いよ、お前…」
「…うん…ごめん」
「追って来なかったら…もう…」
「もう?」
「…お前、なんて…」
「いらない?」
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