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こんな聞き方、フェアじゃない。夏川君を追い詰めてるようで…自分でも、嫌になるけど。
それでも言って、欲しいんだ。
「そんな事……ないけど」
「じゃあまだ、いる?俺の事」
「……」
次の、欲しい言葉を待っている。
「…当たり前だろ…」
あぁ、夏川君。
俺はもう、抱き締めてしまいたいくらい…君が、好きだよ。
「ち、ちょっと…」
って、本当に抱き締めてる。
「あぁごめん、つい」
パッと手を離すとすぐ、誰かに見られてないか辺りを見回す夏川君……当然だけど、ちょっと悲しい。振り返った夏川君の顔がまた赤く見えるのは、夕陽のせいだろうか。それとも、俺がそう思いたいだけか。ちょっと…悲しい。
「お前……時と場合、考えろよ…」
「えっ」
それって……
「ここじゃなきゃ、してもいいんだ?」
さっきキスしようとしといてこんな事言うのも何だけど。
「いっ」
夏川君は破裂したように、両手で俺を突き飛ばすと、
「言わせんじゃねーよ!バーカ!バカ竜胆っ」
子供みたいに言い放って、そのまま走り去ってしまった。
「あ……」
また怒らせてしまった……
いつもこんな風。
夏川君はいつも不機嫌。
俺のせい。
困らせたくはないんだけど、
夏川君が不機嫌なのは……実は、ちょっと嬉しい。
いつも、俺の事を考えてくれてるみたいで。
俺のせい。
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