1/6
前へ
/43ページ
次へ

俺の友達、夏川君はいつも不機嫌。 もう高校生だってのに、毎日俺に当たり散らす。 子供みたいに。 今だって、朝お母さんが寝坊して起こしてくれなかったから遅刻寸前だったって、わざわざ違うクラスの俺の所まで来て騒いでる。 〝自分で起きなよ〟とは到底言えず……火に油を注ぐだけだから。だから毎回俺は、 「そうなの、大変だったねぇ」 と優しい笑顔をくれてあげる。そうしたら、 「まぁ…間に合ったから、良かったけど」 少し機嫌を直す。 「そうだね」 寝癖を跳ね散らかしてる髪を直してやる。と、 「お…おう」 いつも真っ赤になって下を向く。 それが可愛い。だからいつもしてあげる。 不機嫌に、付き合ってあげる。 家が近所とかじゃないから、登下校は別々。 なのに夏川君は朝と帰り、必ず俺のクラスにやってくる。友達ならよくある話?でも俺は、夏川君に特別に思われてるみたいで、嬉しい。 どの友達よりも。 だから、 帰り不機嫌なのは、少し理解できる。 「おいっ竜胆!」 〝りんどう〟は俺の下の名前。俺は〝夏川君〟なのに対し、この扱いは…グッとくる。 ただ…名前が珍しいだけか?いや俺、苗字も珍しいけど。 階段を下りてる途中、俺は振り返った。 「何?」     
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加