l meet you

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 ケーキのおかげか私はずいぶん前向きに仕事が出来ていた。手帳の中身の機能についても、いろいろと案が浮かびそれを企画書にまとめていた。 「仕事が楽しいと気分が違うな」  あ、たまには落ち込んでない時にケーキを食べようかな。嬉しいことがあった時のご褒美みたいな感じで。 「いらっしゃいませ」  あれ……廣人くんがいない。  いつもの閉店近く、店内を見渡しても廣人の姿はなく、居たのは五十歳前後くらいだろうか、白髪まじりの髪をした男性が立っていた。 「あの……廣人くんは?」 「廣人の友達ですか?」 「いえ、あの知り合いです」 「そうですか。廣人はちょっと風邪をひきまして、休みを取っています」 「え? 大丈夫なんですか?」 「大したことはないようです。ただ仕事が仕事なので、休ませているだけです」 「そうだったんですか……。あ、えっと……モンブラン一つ下さい」 「モンブランですね。少しお待ちください」  葵はケーキを手にすると、店を出た。考えるのは会えなかった廣人のことだった。  大丈夫かな……。風邪ひいたって、廣人くんちゃんとご飯とか食べれてるのかな。独り暮らしだと……。  思わず葵の足が止まる。  私、廣人くんの連絡先知らない。連絡先どころか独り暮らしなのか、どこに住んでいるのかも、何も知らないんだ。あんなにいろんな話を店でしてきたのに、私は廣人くんのことを何も知らない。  
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