「私は、ここに」

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だれか、いませんか。わたしはここにいます。 幼い頃に与える、優しい言葉。 それからずっとここにいる。 地上から酸素を取り入れる換気口と、少しの掃除用具があるだけの地下。 栄養だけは欠かさずに、たまには身体を綺麗にして。 2人しかいない世界。 ずっとまってます。まだしらないひと。 ある日、「外」から聞こえた声に興味という意思が芽生え、口論になった。 思わず伸ばした腕は空を切り、もつれた足は冷たいタイルに滑る。 顔が、落下する。 ゴキンッ 砕けた音がした。顎からタイルに求愛していた。 はやく、はやく。 泣いている。覆い被さって離れない。 もう縛るものはないのに。いつでも出られるのに。 誰か私を見つけて下さい。 私はここに、います。 冷たいけど、動けないけどここにいます。 はやく、はやく、私を見つけて下さい。 私がここに閉じ込めた、 私から離れない少女が死ぬ前に。 誰か、お願いです。 「わたしは、ここにいます」
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