秘密の約束

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これならきっと見られない。 アラサーのキャリアウーマンが、こんな少女漫画を電車で読んでいるなんて、わかったら絶対笑われちゃうもんね・・・。 (でも、せっかく座れたし、家までなんて待てないし!) 表紙をめくり、1ページ1ページ、わくわくしながら読んでいく。 早速の胸キュン展開に、心の中できゃーきゃー叫ぶ。 (わ~、赤面してしまう・・・) いくつになっても、純愛ものはやっぱりいいよね。 読み入っていると、私の自宅駅到着のアナウンスが車内に流れた。 (!!やばっ・・・!) 「す、すみません・・・!降ります!」 さっきのサラリーマン同様、私は慌てて立ち上がる。 そして読みかけの本を片手に、「すみません、すみません」と言いながら、人をかき分けて電車から降りようとした・・・その時だった。 (あっ・・・!) 手元から漫画本が落ちてしまった。 電車の中、降り口付近、たくさんの人の足元に。 「あの、すみませ・・・」 「まもなく扉が閉まりまーす」 「!」 非情なアナウンスに泣きたくなった。 もちろん、車掌さんは私の状況なんて知っているはずがないけれど。 (どうしよう・・・) 拾いたい。けど無理だ。 そんな気持ちで絶望的になった時。 「とりあえず降りて」
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