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(まさか、同じ電車の同じ車両だったとは・・・)
ちょっぴり運命を感じつつ、私は改めてお詫びを言うことにした。
「申し訳ありませんでした。危ないことをさせてしまって」
「ん?ああ、いいよ。有島さんのじゃなければ拾わなかったし」
(え?)
ドキリとした。
けれど、後藤さんはそんな私の気持ちには気づかない様子で、ふっと駅の時計に目をやった。
(あっ・・・)
「すみません、電車・・・降りる駅、ここじゃなかったですよね」
「ああ、いや、いんだけど。ごめん、気い使わせて」
「い、いえ」
(どうしよう・・・迷惑かもしれないけど)
「あの、電車が来るまで一緒に待っていてもいいですか?」
「え?いいのに。10分は来ないよ」
「それは大丈夫です。・・・あ、もちろん、お邪魔じゃなければなんですけれど・・・」
・・・こんなこと、やっぱり迷惑だったかも。
不安な気持ちになっていると、後藤さんのふっと笑う声がした。
「・・・じゃあ、お願いしようかな。ありがとう。嬉しいよ」
(!?)
今、嬉しいって言った?
聞き間違いじゃないよね・・・?
後藤さんの言葉を頭の中で反芻し、自分自身を納得させる。
次の電車がくるまでは、私はここで、一緒に待っていていいはずだ。
うん。
「・・・」
「・・・」
だけどいざ、後藤さんと二人きり。
何を話せばいいだろう・・・と、無言のままで悩んでいると、後藤さんは「ああ」と言って、思い出したように話し出す。
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