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「でも、斎藤社長は気にするの」
「えー?有島さんの気にしすぎじゃないっすか?」
「・・・」
(この~!)
ワナワナと震える拳を握る。
なにか言いたいところだけれど、これ以上うまい言葉が出てこない。
どうしたものかと思っていると、後ろから、「こら」と軽く怒った声がした。
「あっ・・・、後藤さん」
声の主は、企画部課長の後藤さん。
32歳の、高身長の眼鏡イケメン。
そして私が、秘かに憧れている人だ。
「桐ケ谷、有島さんを困らせるな」
「えー、だって」
「だってじゃないだろ。すみません、有島さん。いつも桐ケ谷のフォローをしていただいて」
「あ・・・いえ・・・」
私は、一瞬でしおらしくなってしまった。
だって、後藤さんにこんなことを言ってもらえる機会など、そうそうないことだから。
「桐ケ谷。おまえは気にしなくてもな、気にする人は気にするもんだ。特に、斎藤開発の斎藤社長はかなり気にする人だから。
教えてもらってよかったな。このまま資料が渡っていたら、契約破棄もありえたぞ」
「ええっ!?マジっすか。そんなに『斎』にこだわりがある人なんですか」
「ああ。社名にも使っているし、かなりこだわりを持っているみたいだな。そういう一つ一つのこだわりが、あれだけの業績にも繋がってるのかもしれないし」
後藤さんが呟いた。
すると、桐ケ谷くんはまた「マジっすか!!」と目を丸くして驚いていた。
「うわー、斎ってハンパないっすね。すいません、有島さん、助かったっす」
「・・・う、うん・・・。これからは、気を付けて」
「いーっす」
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