秘密の約束

9/16
前へ
/16ページ
次へ
(ルンルンルン・・・) 絶対に口には出せない、ご機嫌な曲を脳内で口ずさみながら家路に向かう電車に乗った。 帰宅ラッシュドンピシャの時間。 当然ながら混んでいて、人混みに押されるように、車両の真ん中辺りの空いている吊革を見つけてつかまった。 (はあー、よかった。とりあえず、吊革ゲット!) と、ちょっとほっとした瞬間。 「・・・あっ、すいません!」 (ん?) 突然、目の前に座っていたサラリーマンが慌てた様子で立ち上がる。 どうやらここが、降車する駅だったよう。 ドアが閉まる直前に、バタバタと電車を降りて行く。 (あ、ラッキー!) 目の前なので、私はそそくさ座ってしまう。 (やった!今日はなんかツイているかも) 昼間は後藤さんにフォローしてもらったし、ももこちゃんには「目標で憧れてる」なんて言われるし。 今日はきっと、私はものすごくツイてる日なんだと思う。 (へへっ・・・) 上機嫌で、カバンの中からカバーのかかった本を出す。 昼休み、会社近くの本屋で買った少女漫画の第二巻。 今日発売日だったから、誰にも会わないよう急いで買ってきたものだ。 (電子書籍も流行っているけど、やっぱり私は、まだまだ紙派なんだよね・・・) 好きな漫画の発売日も重なって、やっぱり今日はツイてる日。 早く読みたい。 両隣、そして前に立っている人たちに見られないよう、ピシリと本をまっすぐ立てて、顔から20センチの距離で読む。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

127人が本棚に入れています
本棚に追加