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祭り
今日は勇気を出して、クラスの気になるあの子をお祭りに誘った。
OKを貰えると思っていなかったので、
「じゃ、じゃあ待つ合わせは、神社の、入り口の、木の、下で」なんて噛んでしまったりはしたが。
まあ、結果オーライである。
当日、僕は待ち合わせよりも30分早く、着いてしまった。当然、彼女は来てなくて、でもなぜか、それが少し切なくて。
僕は入り口の木の下で待つ。
目の前をカップルが通り過ぎていく。男の人は、とてもマッチョだ。
僕は入り口の松の木の下で待つ。
小さな子が目の前を走り抜けていく。両手に、かき氷を持っていた。多分、抹茶味とパイン味。匂い的に。
僕は入り口の松の木の下で祭りに誘ったあの子をまつ。
そういえば、彼女はハンドボール部で、友達の女子に、「手に塗るやつが臭いんだ」と話していたのを思い出す。あれ、なんだったっけ?
僕は待つ。まつ毛のぱっちりしたあの子を。
僕は待つ。来たら絶対に行ってやるんだ、
「え、全然待ってないよ。今来たところ」
僕は待つ。ゆくゆく、このデートが成功したら、この神社に祀られている神さま全員に、ありったけの賽銭を投げてやる!
僕は待つ。時計は敢えて見ない。
待つ。
待つ。
待つ。
ま…
浴衣は反則だって。目合わせられないもん。
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