18章 ラブチェス

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・ 夜の深みは増していく。 まだ夕方の六時なのに外はもう真っ暗だ。 あたしは制服から自分のジーンズに履き替えると店を出て駅へ向かった。 「カットなら直ぐ済むだろうし……」 呟きながら電車に乗り込む。 まだ明かりの付いている店内を外から覗き、あたしはドアを開けた。 「まだ、大丈夫ですか?」 ひょっこり顔を覗かせると店長さんが気持ちよく迎えてくれた。 「マモルは手がつまってるから俺でよければすぐできるよ!」 「ああ、じゃっお願いします」 店長さんに窺われ、そう答えた途端に奥から声がした。 「店長、俺いけるから30分待ってもらって!」 「……だって。30分待てる?」 「………」 やっぱりそうきたか……。 あたしの担当をしてくれるスタイリストのマモルさんは今まで他の店員にあたしを任せたことがない。 なぜだろう── “美容師の男なんて大体、ホモか女好きのどっちかなんだよっ…” 「………」 すごい偏見だけど、今までは余り気にもしなかったことが夏希ちゃんに言われたせいで少し気掛かりになっていた。 どうしようか…… “担当、女の人に代わって” 「………」 店長さんで充分何だけど…店長さんも男だしな…… タダのカットモデルだとなんだか要求は言いにくい。そう思いながらあたしは少し考える。
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