18章 ラブチェス

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無言のあたしは待ち合いのソファを勧められ、そこへ腰掛けた。 「あの、たまには女性のアシスタントさんのカット練習でも……」 受け付けに行ってこっそりお願いしてみたらあっさり却下されてしまった。 まあ、金を払わない以上人を選ぶなんておこがましいよね… 仕方ない。 ちょろちょろとソファから立つあたしをマモルさんは何気に気にしているようだ。 丁度、施術していたお客がシャンプーに入るとマモルさんはあたしの元へやってきた。 「時間ない? あと五分で終わらせるから待ってて」 終わらせるって… 「いいですよ、待ちますから」 マモルさんはソファに座っているあたしと目線を合わせて腰を落とし、話し掛けてくる。 「そ、ごめんね。…結構伸びたね?今日はカットだけ?」 「はい、その予定」 「………」 答えたあたしをマモルさんは無言で見つめる。 「なにか?」 「うん、俺、倉ちゃんに軽くパーマ掛けたいんだけど…」 「パーマ?」 「そ、秋冬のスタイル作らせて欲しいんだけど」 ヘアモデルでタダにしてもらってるからダメとは言えない… 「軽く二、三ヶ所巻くだけだから時間掛かんないよ」 「ならお任せします」
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