72人が本棚に入れています
本棚に追加
・
「実はそろそろ来てくれる頃だな~って思ってたとこだった」
お湯で髪を濯ぎながらマモルさんは上からあたしを覗き込んでそう話した。
「もう少し早めに来たかったんだけど色々と忙しくて…」
「ああ!そう言えば観たよ。カップラーメンのCM」
「はは、色んなとこで言われる~…やっぱテレビだね。観てる人多い」
あたしの言葉にマモルさんは笑いながら洗い終わった髪をタオルで巻いた。
「でも、あのキスシーンはちょっと妬けたな……」
は?──
椅子に腰掛けて鏡の前に向かいマモルさんと鏡越しに顔を合わせた。
なんだか今まで聞いたこともない言葉を言われた気がする。
あや、どうしようか?
なんだかヤバイ展開になりそうなんですけど……
気持ちそう焦ったんだけど、平然を装うあたしにマモルさんも普通に笑顔で返してくる。
今のは女性客向けのちょっとしたリップサービスなのだろうか?
「先に巻いてからカットするから」
「はい」
短い毛束をコームで掬い長くて器用な指先が繊細な動きを繰り返す。
その動きを見つめるあたしとマモルさんの視線が鏡の中で重なった。
最初のコメントを投稿しよう!