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「アーサー様何処へ行ってらしたのですか?サクレパス先生がお怒りになっていましたよ」
アーサーが帰るとサクレパスの弟子をしているライラ・オルコットがアーサーを門前で待っていた。ライラは、アーサーにとって城内で唯一気の許せる友達だった。いつも白いローブを深くかぶっていて、その隙間からピンク色のパーマがかった髪がチラチラと見えている。
「クラリッサに行ってきた」
「クラリッサってあの大門近くの居酒屋ですか?サクレパス先生が怒ると私にまで飛び火が移るるんですよ」
「悪い悪い。サクレパス先生にはちゃんと謝っておくよ」
「っもう」
アーサーが部屋に戻るとサクレパスがひどく怒った様子で待っていた。
「何処へ行ってらしたのですか。皇太子たるもの勉学をさぼりましてや夜の城外へ出るなど言語道断ですよ」
「ああ。すまん」
アーサーは少し不機嫌な様子で言った。
「すまんとは。そんなことじゃあ国政なんて務まりませんよ。明日からはみっちりやってもらいますからね」
「分かってる分かってる」
アーサーは見るからに嫌そうな顔をして「はあ」とため息をつきながら机に向かった。机の上には何十枚もの資料が積まれている。
「それは明日までに覚える約束でしたよね。しっかりテストさせていただきますからね」
サクレパスはそう言い残して部屋を去っていった。アーサーはその資料の山から一番上にあるのを右手でとって左肘を机につきながらぼーっとそれを眺めた。
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