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「レオン、これはあくまで演習だから決してアーサー様に怪我の無いように配慮すること」
セシルが深刻な顔でレオンに忠告した。アーサーとレオンはお互い向き合った状態でお互い木刀を構えていた。その中間にはセシルが立っていて決闘の審判を行おうとしていた。少し離れたところではクリスタが楽しそうな表情で見守っていて、その隣にはサクレパス・アビーとライラ・オルコットの姿もあった。
「そんなことわかってるよ。最も、そこのアホヅラがあまりにものろまで手加減しきれねえかもしれねえけどな」
「おいレオン」
「いいよセシル」
レオンとセシルの会話にアーサーが割って入った。
「セシルは俺が負けると思ってんのかよ」
「いえ、決してそういう意味で言った訳では・・・」
「まあ見てろって」
アーサーは木刀をレオンの顔に突き出して
「手加減なんてすんじゃねえぞ」
と大きな声で叫んだ。
遠くから不安そうな目でライラがアーサーを見つめた。
「大丈夫なんですか?アーサー様」
サクレパスが顔をしかめる。
「うーん。わしもたくさんの剣士を見てきたが正直アーサー様の腕前は到底9歳の少年のものとは思えないほどじゃ。それに名高いあのセシル・グリンソンと物心ついた頃から訓練をしておる。師団の剣士でもなかなか手強い相手だと思うんじゃがの」
「マクレハンの大剣士、セシル・グリンソンの息子。レオン・グリンソンか」
ライラは風に揺れるレオンの銀髪を目で追った。
クリスタは「ふふふ。楽しみね」と一人楽観的な様子で笑っていた。
「それではマクレハン剣技目録の対戦演習規則に乗っ取って、右アーサー・マルティネスと左レオン・グリンソンの剣技演習を開始する。確認だが魔導の仕様および違いの体に致命傷を負わせることを意図した行為は禁止だ」
セシルはレオンを細い目で見ながら禁止事項を強調した。
「何回も言わなくてもわかってるよ」
レオンがボソッと文句を言った。
「それでは、開始!」
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