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アーサーのお目付役を任されているセシル・グリンソンはそう言った。セシルはまだ25歳だがこのマクレハン王国一の剣士として知られている。身長190センチを超える大男だがその体つきは華奢で、銀色の長髪が彼のトレードマークとなっていた。セシルは首都グレハンガムから外れた小さな田舎町にある鍛冶屋で生まれ育ち、時々グレハンガムまで父の作った武具の運搬を手伝っていた。そんなセシルがアーサーの父であるアーロン・マルティネスと出会ったのは18年前、まだ当時二人が7歳だった頃だ。アーロンが国史の勉強を抜け出して首都グレハンガムを探索している時だった。アーロンが武具を積んだ馬車に忍び込んでグレハンガムを抜け出そうと企てたのだった。グレハンガムを護る大門の門番に見つかり計画はあえなく頓挫したが、そこで出会った二人はすぐに意気投合した。アーロンは王家の血筋を引くものとして日々訓練と勉強の毎日だったため、気の合う男
友達は一人もいなかった。まったく違った境遇であるが、セシルも人気の少ない田舎町に生まれたことや、鍛冶屋の息子として日々父の仕事の手伝いを任されていたため友達と呼べる存在はいなかった。その出会いがあってから、二人は隙をみてはお互いの職務を放棄してグレハンガムの淵にある小さな湖に集まり剣技の特訓をしたり夢を語り合ったりして楽しんだ。
それから3年後、二人が10歳の時アーロン許嫁としてやってきたのが、後にアーサーの母となるクリスタ・マルティネスである。最初セシルはアーロンをクリスタに取られるのではないかと心配していたが、アーロンが湖にクリスタを呼ぶと、セシルとクリスタもすぐに仲良くなりそれからは3人で湖に集まるのが恒例となっていた。
そしてその5年後。二人が成人となるのと同時にアーロンとクリスタは正式に結婚を発表し、アーロンは晴れてマクレハン王国の国王になった。セシルはアーロンとクリスタの使命もあってマクレハン王国の第一番軍隊長に命名された。まもなくして生まれたのがアーサーだ。
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