キング・アーサー

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 アーロン・マルティネスが王位を継承してからの9年間はマルティネスの奇跡と呼ばれている。アーロンはすぐにその才を開花させた。アーロンの組む捉えどころのない奇怪な戦術は神の見えざる目(インビジブル・アイ)と周辺各国から恐れられた。そのインビジブル・アイを可能にしたと言われているのがセシル率いる第一番軍隊だった。戦場を縦横無尽に闊歩し敵を薙ぎ払うその姿はマクレハンのグングニルと形容された。二人の活躍は、7つもの大国が互いの覇権をかけて争ったドラグルネス大陸史に残る最大の聖戦「ラグナロク」をわずか5年にして終戦に導いたのだった。若干20歳にしてアーロンは7つの大国を統治する大国王になると、マクレハン王国の民は歓喜したが、アーロンはその権利を破棄してそれぞれの国家と平和協定を結ぶのみに止まった。平和協定の内容には、マクレハン王国を除く他の6大国が軍を持つことを禁止する旨が記されていた。それまで軍隊 に勤めていた他国の戦士たちは、軍務から解放されたことに喜ぶ者や、戦いを求めてマクレハン王国の軍隊に入団を希望する者など様々だったが、結果としてマクレハン王国はドラグルネス大陸において名実ともに独裁勢力となった。その頂点に君臨しているのが、セシル・グリンソンだ。現在では7つの部隊に分けられたマクレハン王国の軍隊が各7大国に駐在する形で国の秩序が保たれている。  そんな二人の勇士を生まれた頃から見て育ったアーサー・マルティネスが、勇猛果敢な心身を宿すのは至極当然の結果だった。 「それではアーサー様。あそこの木になるりんごを全て切り落としてください」  セシルが木刀で差したのは二人が立つ場所から20メートルほど離れた所に育つ大きなオーク木だ。 「木って遠くに見えるあれ?」 「そうです。決して枝を切り落としてはダメですよ」 「無理だよそんなの」 「今まで教えてきたことを実践すればできますよ。心眼で捉えるのです」     
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