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セシルはアーサーの肩をポンと叩いて言った。その手に背中を押されたのか、アーサーは大きく息を吸って、鋭い眼差しでその木を見つめた。両足を大きく開いて腰を落とし、剣先で目標を差すように剣を突き出した後、弓を引くようにその剣まっすぐと後ろに引いた。アーサーの足元の空気が渦を巻くように動いていることを地面に散らばった葉っぱが示していた。
「ハッ!」
まるで獲物を突き刺すかのように剣を鋭く突き出すと、剣先に集まった空気が線を書くように飛び出して20メートリ先にある木の枝をバサバサと揺らした。
「やった!届いた」
アーサーは喜んだ顔でセシルの方をばっと振り向いた。
「素晴らしいですね。アーサー様。ただ届いただけではダメですよ。あのりんごを切り落とせるくらいの精度と、あの木の幹すら切断する威力を兼ね備えなければなりません」
「えー、そんなの無理だよ」
「いいですか。見ていてください」
セシルはそう言って、アーサーと同じように足をガッチリと開いて腰を落とし、剣を地面と平行に寝かせるようにしてゆっくりと肩の後ろまで引いた。周りに茂る木々や植えられた花々までがざわざわと揺れるのをアーサーは目で追った。空気がその剣先一点に集中するように渦を巻いて集まっているのが見てわかった。
「ハッ!」
セシルが叫ぶのと同時に目にも留まらぬ速さで剣を中に突き出した瞬間、剣先から一筋の線が宙を切った。その線は途中で空中分解し、幾千もの筋となって木に到達し、木になるりんごをぼとぼと切り落としたのだった。
「すっげー!セシルすっげー!」
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