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クリスタがカーゴの肉を一口サイズにナイフで切りながら言った。クリスタは切った肉を隣に座っているセシリア・マルティネスの皿に丁寧に盛り付けた。セシリアは来月4歳の誕生日を迎えるアーサーの妹だ。つい昨年まではなかなか言葉を覚えないと多くの人が心配していたが最近おぼろげながらに言葉を話すようになってきた。
「平和協定にウィータの規制に関する条文を追加する件じゃな」
同じ食卓を囲んでいたサクレパス・アビーが口を開いた。
「ええ」
「ウィータの規制って?」
アーサーが会話に混ざる。
「今ワシらが食べておるこのカーゴは、ウィータによって生命を与えられたことは知っておるな」
「うん。そんなの知ってるよ」
サクレパスの問いに対しアーサーはもしゃもしゃと肉を口に運びながら答えた。
「今、サルザラク王国のある組織がこの技術を転用して死者を蘇らせる研究を始めておるということがわかったのじゃ。しかしこのウィータによって生み出された生命は心を持っておらんのじゃ。生命魔道とは、生物の生存原理を改変する技術であって、一度なくなった魂を呼び戻すことはできないからの」
「ふーん。じゃあサルザラクはなんで魂を持てない死者を蘇らせようとしているの?」
「労働資本じゃよ。表向きはな」
「労働資本?」
「死者に働いてもらうのさ。そしたら生きているわしらは働かんくても済むじゃろ?」
「そんなこと許されるはずがない。いくら魂がないからって、そんな奴隷みたいなこと」
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