二章

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私がパソコンのキーボードを叩く音しか聞こえない空間は、集中できるかと思っていたら、意外に気が散ってしまう。 今頃みんな楽しく飲んでるんだろうな、金田さんは酔ってクダを巻いたりしてないかな、どうせ鑑田主任は桃園さんに言い寄られているんだろうな。 せっかく誘ってもらったのになぁ…… そういえば、行けなくなったのに謝罪もしなかった。明日言えば許してくれるかなぁ…… ……仕事しなきゃ。私は唇を噛んでパソコンの画面を睨む。 「まだかかりそうだな」 「……」 「……」 「……えぁ?!」 私はツーテンポくらい遅れて、隣でパソコンを覗き込む人の気配に気付く。鑑田主任が目を白黒させる私を見て喉を鳴らした。 「無視されたかと思った」 「か、鑑田主任?! 飲み会は?」 「一次会で抜けてきた、誰かさんが孤独に残業してて可哀想だからね」 主任は私の目の前に肉まんが入ったコンビニ袋を突き出す。若干時季外れ感はあるが、嬉しくないとは思わない。 「酒気帯びで職場に来ちゃダメですよ……」 「飲んでないよ、一滴も」 「なんで」 主任は後ろ頭を掻いた。
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