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二人で会社の駐車場まで歩き、主任が国産の軽自動車の前で鍵をかざす。
「乗って」
「助手席でいいですか?」
「勿論」
私はドアを開けて助手席でシートベルトを締める。
「よろしくお願いします」
「了解」
主任が勢いよくサイドブレーキを引いた。
「墨村は車持ってないの?」
「あー、免許返納したんですよ私」
「返納?! 返したの? その齢で?」
「はい。もう、運転はしないので」
「……そう」
「外車に乗ってるかと思いました」
「高いやつ?」
「そう、フェラーリとか」
主任がとんでもないとばかりに否定した。
「そんなの乗ってたら『このボンボンが』って鼻に付くじゃないか。社長一家って言うのはね、意外に金銭感覚は普通なもんだよ」
そういえば一昨日皆でラーメン食べに行ってたな、チェーン店の。
大衆居酒屋にも普通に行くし、何だかんだ庶民派だよな鑑田主任は。
「でもボンボンはボンボンですよ」
主任は「そういうところが墨村だよね」と笑い飛ばすと、急に低い声で言った。
「ボンボンという立場はとても強力な武器になるからね。乱用するんじゃなくて、いざという時に最大限有効利用するべきだというのが……俺の持論だよ」
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