二章

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不敵に口角を上げるその横顔が、妙に怖ろしく……だけど色気があった。 「……それ、使ったことあるってことですよね? ボンボンという自分の武器を」 「どうだろうね……?」 いや、絶対使ったことあるだろ。小賢しそうだし。 「……そうだ墨村。今度奢ってよ。俺今日タダ働きしたからね」 「タダ働き」という言葉に私の内臓が一気に冷える。 「え、まさか主任、タイムカード切らずに仕事してたんですか!?」 「若い男女が二人きりで残業してたら怪しいじゃないか」 確かに。何で気づかなかった私。私に気を遣ったがばっかりに申し訳ない。 「うわー、ほんとすみません主任、絶対奢ります」 「廻らない寿司がいいなぁ」 「そ、それはご勘弁願えませんかね!?」 からかってくる主任に反論をしていると、「それなら二人きりで食事ができるかな」なんて考えが頭に浮かんだ。「それは悪くないな」と思ってしまった自分を戒めるように、私は左腕をつねる。
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