三章

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床に飲みかけのコーヒーがだらしなく溢れ続けている。狙ったのかなんなのかは知らないが、私の足にも茶色のシミができてしまった。 取り巻きの女たちが私の足を見てクスクスと笑いだす。海山さんの笑顔は寸分の狂いもない。 「その言い方、まるで墨村さんと鑑田くんが、『友達』として、仲良くしているみたいね? じゃあ一生、貴女たちは友達同士で居てくれるのね?」 脅すような言い方が気に入らなかったとか、コーヒー足にかけられてムカついてたとか、冷静じゃなかった理由は色々ある。 「……それは私と鑑田主任が決めることですから」 私は、コーヒー缶に一度だけ視線を落とし、そのままガラスの扉を引いて出て行った。 敵だと思うなら思えばいい。そんな安い脅しで、私を潰せると思うな。
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