三章

8/14
前へ
/254ページ
次へ
昼休みのチャイムが鳴る。あと一時間で大学に向かう時間だ。私は珍しく手作りしたお弁当を取り出して説明会の資料も机に出す。 「墨村やる気だなぁ」 金田さんが横から口を出してきた。 「母校なんて久々ですもん」 「今日の墨村、超笑顔」 金田さんが横からさらに手を伸ばし、私が一生懸命作った卵焼きを摘まむ。 「何勝手に食ってんですか?」 「毒味毒味。説明会前に腹壊しちゃいかんだろ」 「ふっざけんな」 二人でつまらんやり取りをしていると、人事課の入り口からよく通る声で呼び掛けられた。 「墨村さーん」 振り向いた私は思わず間抜けに口を開けてしまった。
/254ページ

最初のコメントを投稿しよう!

941人が本棚に入れています
本棚に追加