三章

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「ねぇ! ふざけてる場合じゃないんです! 出してください!」 社会人がこんなことをして許されると思ってる? 「出すよー、一時過ぎたらー」 間延びした口調で返されて、脳天に血が昇る。 「わかってますか!? 会社の運営に関わるんですよこういう行為は!」 「なに真面目ぶっちゃってダサーい」 若い声だった。この人たちと私は、同じ鑑田グループの社員なのか。 「いいから出せ! ここから!」 ついにドアを叩きながら声を張り上げてしまったが、私の言葉は全く届かないのか悪魔の嘲笑が聞こえるだけだ。 「墨村さーん。これに懲りたら、もう鑑田くんに色目使っちゃダメだよ」 海山さんの勝ち誇ったような声を聞いたのを最後に、人の声は聞こえなくなった。
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