三章

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身から出た錆だろうか…… 私はその場に力無く座り込む。周りには汚くて大きな着ぐるみや、古いパソコンしか置いていない。多分普段使わないものを取り敢えず置いている物置だろう。 あの時、大人しく「主任とはずっと上司と部下として節度を保ちます」と言っておけばこんなことにならなかった。そもそもその気しかないのに。浅慮な自分に嫌気がさす。 ここまで連れてこられる間、人の子一人すれ違わなかった。人が通ったら、奇跡だ。窓から出れるかもと思ったけれど、ここは3階だから飛び降りても無事ではいられない。 もう、鑑田主任に会わす顔がないな…… 視界がボヤけたと思ったら、手のひらに涙が落ちてくる。 アッサリ彼女たちのいいようにされた自分が情け無い、恥ずかしい、見っともない。 真新しいスーツの袖が涙を吸い込む。 こんなに浮かれて、私馬鹿じゃないの。 涙を誰にも見られないのは不幸中の幸いかなと思った矢先、けたたましい足音が近づいてきた。
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