四章

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「え? 墨村さんが? 鑑田主任を? 落とすって、言ったの?」 「大声で言うのは止めてくれる?」 本人に宣った時はどうでもなかったのだが、冷静に考えたらとんでもなく恥ずかしい。私どんだけいい女気取りだよ。 「いや、だって墨村さんって鑑田主任とか真っ先に恋愛対象から外しそうじゃん。いわゆる三高男子だよ」 なんでそんな古びた言葉知ってんだよ。 「私だって今の時代に合わせた三優男子が良かったよ、できれば」 平凡な家庭で育って平凡な性格の平凡に素敵な男性と、平凡な幸せを掴みたいんだよ。 「じゃあ何で。いつも堅実な墨村サンが」 私が知りたい。 「……何ででしょうねぇ……」 私は本来短気な性質らしく、頭に血が昇るといつも何かをしでかしてしまう。でも、珍しく後悔をしていないのは事実であって。 「まぁ面倒くさがりの墨村さんが狙うんだから主任のスペックの高さよね。で、主任何て言ってたの?」 牧瀬さんの当然の質問に、私は重々しい口を開いて答える。 「……言葉も無かったよ」
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