四章

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あの時私が鑑田主任のネクタイを引っ掴んで宣戦布告をすると、主任は電池を抜かれたように固まって絶句した。 告白なんかされ慣れてるだろうに、何故そう意識を手放したような顔をするのかわからない。 「あの、主任。私の言ったこと、聞こえてました?」 間が抜けた声が主任の口からこぼれ落ちる。 「……俺を落とすって……どういう意味?」 何故決死の告白の説明をもう一度しなければならないのか。どこの鈍感坊ちゃんだよ全く。 「貴方を私の恋人にしますという意味です! 今まで言われたことないですか!?」 捨てゼリフのように言った後、車を降りてキャンパスに向かっていると、車の鍵を閉めた主任は早足で私に追いついてきた。 「受付の場所わかる?」 「大体覚えてます。付いてきてください」 「ありがとう、助かるよ」 仕事中の柔らかい声に戻っている。顔を見ても人当たりの良さそうな微笑を浮かべていた。 その日私たちが30分程の説明会を(おこな)った後車で会社に戻る間、文字通り一言も会話が無かった。
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