四章

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会社のエントランスに赴くと、受付嬢の横でブラウスとロングスカートのお嬢さんがちょこんと立っている。 ……あれだろうか。えらく、若いのだが。まだ、20代前後だろう。色白で睫毛は長くお人形のような美少女は、社内の無機質な空間には極めて異質だ。 とりあえず受付嬢に声を掛けてみる。 「あの、嶋木係長のお迎えの人をさらに迎えに来たんですけど」 「あ、私です!」 カナリアのような声が返事をした。彼女が「華生さん」らしい。 「すみません、主人がご迷惑をおかけして」 嶋木係長を「主人」と言った。今年一番の衝撃だけどなんとか取り繕う。 「いえいえこちらこそ、お忙しい中ありがとうございます。ご案内しますね」 「よろしくお願いします」 にこ、と彼女が微笑んだ瞬間、空間に花が舞った。その辺の美人とは、一線を画している。 嘘だろ、これがあの上司殺しの妻か。
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