940人が本棚に入れています
本棚に追加
会社のエントランスに赴くと、受付嬢の横でブラウスとロングスカートのお嬢さんがちょこんと立っている。
……あれだろうか。えらく、若いのだが。まだ、20代前後だろう。色白で睫毛は長くお人形のような美少女は、社内の無機質な空間には極めて異質だ。
とりあえず受付嬢に声を掛けてみる。
「あの、嶋木係長のお迎えの人をさらに迎えに来たんですけど」
「あ、私です!」
カナリアのような声が返事をした。彼女が「華生さん」らしい。
「すみません、主人がご迷惑をおかけして」
嶋木係長を「主人」と言った。今年一番の衝撃だけどなんとか取り繕う。
「いえいえこちらこそ、お忙しい中ありがとうございます。ご案内しますね」
「よろしくお願いします」
にこ、と彼女が微笑んだ瞬間、空間に花が舞った。その辺の美人とは、一線を画している。
嘘だろ、これがあの上司殺しの妻か。
最初のコメントを投稿しよう!