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少し歩いた先にある医務室まで華生さんを連れて行くと、彼女は屍のようなご主人を目の当たりにするやいなや、大きな声で小言を言い出した。
「もう兄様は! あれほど『体調悪いんじゃないですか?』って確認したじゃないですか! こんなになるくらいなら大人しく休めばよかったんです!」
……兄様?
瀕死の係長は妻の姿を見ると煩わしそうに言い訳をはじめる。
「うるさい……休んだ分だけ仕事が滞るだろうが……」
「兄様一人が休んで回らない会社なら潰れてしまえばいいんです!」
虫も殺さんような顔してすごい事言う。私が若干引いていると、鑑田主任が彼女に優しく声をかけた。
「まぁまぁ、華生さんその辺で。すぐ来てくれて良かったよ」
彼女は主任を見上げると眉を下げて謝る。
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