一日が毎日

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一日が毎日

 あたしの一日はいつも母親に起こされる事から始まる。目覚まし時計が無い訳でも無く、遮光カーテンを使っていて朝日が差し込むのが分からない訳でも無い。特に理由も無くにあたしは毎朝母に起こされるのだ。 「真理(まり)、起きなさい、もう朝よ」 あたしはそのままむくりと上半身のみを起こし、背伸びをしながら欠伸をする。そんな私を見ながら母親はカーテンを開けた。その向こう側には灰白色に輝く美しい城が見える。 「ほら、ジノヴァ神様のお城も輝いてる」 母親はそう言って私の部屋を後にした。それからあたしは窓に見える城に向かって跪き両手をあわせてジノヴァ神様に祈った。 「天におわします我らがジノヴァ神様、本日も健やかなる一日を私共にお与えくださいませ。アーメン」  あたしは一日の安寧を祈り、母親が朝食を作って待つリビングに向かった。リビングの上のテーブルには果物と水とパンが乗っていた。それがあたし達の食事だ。朝も昼も晩も果物の種類が変わるだけでそれは変わらない。あたしが生まれた頃よりこうなのだからこれに関しては疑問に思うことは無い。いつだったか読んだ本で昔の人は「肉」や「魚」を食べていたと読んだのだが、あたしはそれに関して「生きたものを食べるなんて酷いことをしていたのだなぁ」と、言う感想しか持てなかった。 「真理、今日は学校でしょ?」 「うん、今日は神権宣教学校だから夕方までかかると思う」 「ここを頑張ればジノヴァ神様のお城にお勤め出来るかもしれないのだから頑張らないとね」 「うん、ここが頑張りどころですもの」 朝食を終えたあたしは席を立った。そしてまだ半分残っていたコップの水を飲もうとした。それを母親が止めた。 「ちょっと待って、お塩入れないと」 そう言うと母親は小さな陶器の瓶から塩を一つまみ出してあたしのコップにぱらぱらと落とした。 「あたし、しょっぱい水あんまり好きじゃないのよね」 「駄目よ、人は塩分を取らないと駄目なのよ。ほら、飲んで飲んで」 人には塩分が必要らしいがその理由を聞いても母親は答えてくれない。と、言うより知らないみたいだ。周りの大人たちも「塩を摂取(とら)ない」といけないとは言うが今だかつてちゃんとした理由を聞いたことが無い。
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