一日が毎日

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 朝食を終えたあたしは学校に向かった。真白い正方形の塊に窓を付けたような無機質な団地にあたしは住んでいる。一部の人達以外は皆同じ団地に住んでいた。その一部の人達と言うのは窓の外から見えたジノヴァ神様の城にて暮らす元老院と呼ばれる人達だ。あたし達のジノヴァ神様であられるジノヴァ神様の言葉をお伝えになる大変崇高なるお仕事をしているのだからあたし達の暮らすような団地には住まないのだろう。団地に住む人達もそれに関して疑問に思うことは無かった。 「お早う、真理」 「お早う、真理(まさみち)」 あたしには幼馴染がいる。名前は真理、ハンサムな男だ。あたしと同じ団地に住んでいると言うこともありすぐに仲良くなった。もう今年で十年来の付き合いとなっていて、男女の関係こそ無いものの唯一好意を持つ男の人と言える。ちなみに「真理」とはしんりの事で、あたし達のジノヴァ神様であられる「ジノヴァ」の真理を語る者とされる「ジノヴァの証人」が好んでよく使う言葉である。  あたし達の親は「ジノヴァの証人」だ。母親はあたしが生まれる遥か遠い娘時代にジノヴァの証人の自宅訪問を受けて信仰に目覚めたらしい。真理の親も似たような感じで信仰に目覚めたとの事だった。あたしが生まれる遥か遠い娘時代にはジノヴァの証人は苛烈な迫害を受けていたらしい。と、言っても母親が生まれたとされる「日本」と言う国では怪しい宗教と白眼視される程度だったらしい。父はその怪しい宗教を信仰する妻に愛想を尽かして出て行ったらしい。どうでもいい事だけど。  ちなみにあたしが生まれたのも日本であるらしいのだが3歳だか4歳の頃にこの楽園に引っ越してきた為に日本の事は何も分からない。あたしが楽園に引っ越してきたばかりの時には多くのジノヴァの証人の人々と大きな部屋で一緒に何日も何日も過ごしてきた事しか覚えていない。
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