一日が毎日

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 集会場に着くとあたし達と同じ年齢ぐらいの少年少女達が集まっていた。言うまでも無く全員ジノヴァの証人の親から生まれた子供たちである。と、言うよりこの世にジノヴァの証人じゃない者がいるのだろうか。証人じゃない人がいると言う考えを持った事すら無い。 「お早う、真理」 「お早う、山田姉妹」 あたしに声をかけてきたのは山田真理(やまだ さなり)あたしと同じ団地に住む娘(こ)だ。あたし達より年上でもう洗礼を受けて、人を辞め「姉妹」としてジノヴァ神様に奉仕する仕事を始めている。お団子を上に纏めた短い黒髪から下がる髪にウェイブがかかり、大きく見開かれた目に輝く黒い瞳、背も高い、いつも使う小冊子の挿絵から抜け出たような美しさを持っていた。小柄なあたしからしたら月とスッポン、提灯に釣鐘くらいの差はある。 「今日はどうなさったんですか」 「結婚相手が決まりましたのでその挨拶に」 信じられない事であった。あたしと一つしか年の差が無いのにもう結婚相手が決まったとは。 「え、どこのどなた様と」 「ええ、あたしの会衆の長老の息子さんと」  あたし達の町は広い、それこそ地平線の向こうに広がるまでに団地が並んでいるくらいだ。その団地に挟まるようにして「帝国会館」と、呼ばれる集会場がいくつもある。その集会場から範囲数キロを「エリア」として地域の名前が付けられ、集会場はその地域の名前を付けられ〇〇会衆と呼ばれる。 「あの、どんなお方なんですか? 素晴らしい信仰深い兄弟なのですよね」 「ええ、47歳ながらに純潔を守り続け奉仕活動をなさっていた大変素晴らしい方です」 ちなみに山田姉妹は17歳である。年齢差30歳の結婚など何かあるようにしか感じないだろう。しかし、この世界では珍しい事では無かったし、あたしもそれを気にする事は無かった。 「私、もう明日には純潔を失ってしまうのです。緊張しますわ」 「結婚前に失っての排斥じゃないのだから良いではありませんか」 この世界では純潔を守る事が誉れとされている。幼少期より性知識は学校にて与えられるが「結婚までは決してしてはならない」と厳命されるために本当に結婚するまでそう言う事をする者はいない。もしすれば「排斥」としてここにいる資格を失うのだ、それはとても恐ろしい事で死ぬにも等しい事と教えられているので例え男女がどれだけ仲良くなろうとそういう関係になる事はなかった。
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