一日が毎日

6/7
前へ
/83ページ
次へ
「この様に創世記2章24節には「人は父と母を離れ、妻と結び合い、一体となる」とあります。聖書の冒頭の創世記から男と女で交わるべきと書かれています。それはマタイの福音書19章4節でもイエスが言われている。この様に男と女は結び付けられるようになっているのです。男と男、女と女が結びつく事は歪つであると言えます」  あたし達は長老が聖句を言う度に分厚い聖書から素早い指先の動きで捲りながらその聖句を探し当てる。あたし達が使っている聖書は旧約聖書と新約聖書を二つ合わせ、その中にジノヴァの証人の独自解釈を加えた「新再醒訳聖書(しんさいせいやくせいしょ)と呼ばれるジノヴァの証人独自の聖書を使っている。昔は旧約聖書と新約聖書が二つに分かれていた時のものは悪魔が影から支配する為の宗教だと言われ間違っているとされていると長老始め大人たちから教えられた。あたし達はそれを全く疑う事は無い。  同性愛の問題はかつて何回もものみやぐらにて取り上げられてきた。昔はこの様な人も居たらしいが今や存在しない。 「コリント6章9節にはいくつかの性行動を禁じており、その中で男色をするものは許されないとあります。その様な人達は6章11節にて洗い清められたとされています」 そう、昔はこの様な人達がいたとされているが我らがジノヴァ神様によって洗い清められたとされるのだ。しかし「洗い清める」とはどういう事なのだろうか。あたしはこの話題が初めて出た時に長老に聞いては見たのだが「考えてはいけない」と、言われてしまった。あたしはそれに従いそれについては考えない。いつしかここにいる者たちはそれすら考えない様になっていた。 「あなた方が生まれる前にはこの様な方が多く、私共もそれを治す為に懸命の奉仕をしたのですが…… 悪魔の誘惑は強く残念な事に」 長老は嗚咽し始めた。それと同時に終わりの鐘が鳴った。
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加