一日が毎日

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「では、本日のものみやぐらの研究はこれまでですね。それでは皆さん、終わりの賛美歌を歌って終わりに致しましょう。それでは終わりの歌、賛美歌69番ジノヴァよ歓び給え」 あたし達は賛美歌69番を歌い本日の集会は終わった。だが、あたしにはこれから神権宣教学校があるのでまだ帰る訳には行かなかった。学校とは言うが先程まで受けていた授業みたいなものを受けると言う訳ではない。奉仕活動としてこの集会場や近くにある公園の掃除をするのだ。よくは分からないがこうして地域の為に奉仕する事が学ぶ事になるから「神権宣教学校」と言うらしい。 昔は各家を一軒一軒訪ねてジノヴァ神様の教えをジノヴァの証人では無い人の「世の者」とされる人に伝導していたのだが、今はその必要が無い為に単なる地域のために奉仕をする事の名前となっていた。つまり、名ばかりの学校である。  神権宣教学校が終わり町を夕日が包む頃になったあたりであたしは帰宅の徒に着いた。すれ違う人達は皆あたしに対して「本日は神権宣教学校お疲れ様でした」と、礼をする。あたしもそれに対して「いつも出来る事をしているだけですから」と返す。  あたしは寄り道もせずに真っ直ぐに家に帰った。家に帰ると母が夕食の準備をしてくれていた。いつものように果物のみだ。朝が梨と緑の葡萄、お昼は神権宣教学校で配られた無花果と柿、夜は西瓜にメロン。  夕食中の会話は本日の集会と神権宣教学校の内容を話す事で終わる。本日の場合なら「やっぱり同性愛はジノヴァ神様が禁じておられるのね」「同性愛は悪魔の誘惑なのね」「本日も集会場のお掃除お疲れ様でした」と言った具合だ。その話が終わった後、あたしは入浴し、そのまま寝る。  あたしはこの様な毎日を物心が着いた頃から毎日繰り返している。変わるのは集会の内容と出てくる果物のメニューぐらいだ。多分ではあるがあたし以外の者もこんな毎日を過ごしているだろう。 あたしは、こんな毎日をジノヴァ神様に奉仕できる毎日として楽しんでいる。
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