霧の向こうにて

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「あの親分さんが最近亡くなってな」 葬式などで故人を偲ぶ為に言う「波瀾万丈の人生」じゃなくて本当に波瀾万丈だったのだろうな。 「それで一週だけページに空きが出来ちまったんだよ」 私は編集長が何を言いたいのか察した。 「ひょっとしてその空きコーナー分の記事を私に書けと?」 「そうだよ、最近都市伝説ブームが再燃してるじゃない?」 2018年の現在、何があったかは知らないが都市伝説ブームが再燃していた。と、言っても宇宙人がああとか政府がどうのこうのとか人類削減や選ばれた者しか生き残れないと言う陰謀論に近いものではあった。ある意味で1999年の終末騒ぎが再び来ているということだろうか。 「さっきも言ったけど杉沢村って覚えているか?」  杉沢村、かつて青森県にあったとされる村である。昭和初期、一人の村人が突如発狂して村人全員の命を奪った後に自身も自殺すると言う事件があった。誰もいなくなった村は地図から消され廃村となった、その廃村に居並ぶ廃墟には今も悪霊が住むと言う。そしてその村は今も存在している。と、言った感じの都市伝説だ。  この村の話題はインターネットで主に話題となり、今や可愛い動物の動画を垂れ流すだけになってしまった有名ホラー(元)テレビ番組が数回に渡り特集した事により全国的に話題になった。数回にも渡り青森県を訪ねるも村は見つからずに「現れたり消えたりする」と言うはっきりしない結論で幕を閉じた。それから先はまたインターネット上の話題となり、肝試し好きやオカルト好きやアクセス数稼ぎの目立ちたがり屋が動画やブログなどで「杉沢村探訪記」等を上げるぐらいで「言われれば思い出す」程度の扱いになっていた。 「昔テレビでやってましたねぇ」 「だからちょっと青森に行って探してきてくれないか? 杉沢村」 「いやぁ……」 私は戸惑った、2000年頃に先程のテレビ番組も血眼になって探したが見つからなかったなかったし、この20年近くインターネット上の奴らも青森県に行って探しているのに見つからないものが今更見つかる訳がない。 「これから始める都市伝説コーナーの始まりなんだから杉沢村は外せないだろ?」
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