プロローグ

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 ジノヴァの証人と言う宗教は校歌を歌えない、歌と言うものはジノヴァ神様を称えるものであって学校を称える校歌を歌うなどと言うのはもっての他であった。全校集会の開始時に歌ったところ、母親が学校に確認を入れ、歌った事を確認されてしまった。帰宅後に「何故に校歌を歌った! ジノヴァ神様に申し訳無いと思わないの!」と鬼の形相で言われ、その後はもちろん鞭打ちだった。  小学校の低学年になりお尻を出すことへの抵抗が幼稚園児の時とは比べ物にならなかった。学級委員や生徒会の選挙すらもジノヴァの証人では禁止されていた。理由は…… 「私達は既にジノヴァ神様を選んでいるので人を選ぶなどとはありえない」と言った訳の分からない理由であった、それを大人の選挙でやるなら自由意志としてまだ分かるがこれを子供達の実質模擬選挙にまで口出ししてくる。白票委任すら許されず、棄権するしかないのだ。当然それも母親の確認が入り、周りの勢いに負けて一度だけ学級委員選挙に投票した結果……「ジノヴァ神様は悲しんでおられる! 鞭打つよ! お尻出しなさい!」例によってお尻の鞭で打たれた痕が酷いことになるだけであった。  体育の授業でも勝敗のつくものは「ジノヴァ神様は戦いを嫌っておられる!」と言った理論で見学せざるを得なかった。こんなものは黙って参加すればバレないと思われるが母親は毎回毎回学校に電話をして確認をする。ここで教師は気を使ってくれればいいもののバカ正直に体育の授業の参加有無を報告するものだからバレてしまう。周りの好奇の目や同調圧力に耐えきれずに参加すればもう最後、家に帰った後に待っているのは鞭打ちである。
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