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決戦の地
ぎゅっと握りしめた手が汗に濡れるのを自覚している。
僕はもうずっと、地平線まで見える荒野に一人取り残されたようなそんな不安と孤独に耐え、その時を待っていた。
恐怖がないと言えば嘘になる。
でも誰かが、誰かが挑まなくてはならないのだ、奴らが来るのだから。
ゆっくりと目を閉じ、ほんの一瞬周囲の喧騒から距離を置いた。
ここに来るまでの様々な出来事が思い起こされる。
『ほんとなの?』
僕が選ばれし者になったと告げた時、母は目を見開いて驚きを隠せなかった。
『どうしてお前が…』
父は絶句し、そして何かの間違いじゃないかと狼狽えた。
『嫌だ!』
妹は反対した。
そう、でも間違いじゃないんだ。僕が選ばれし者となった。 行かねばならない。
背を向ける卑怯者にはなりたくない。
そうして僕は今この決戦の地で、その時を待っている。
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