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王子は着替えて道化師の部屋に向かいました。
蝋燭を手に道化師の部屋に向かうと扉の隙間から薄く灯りが漏れていました。道化師もまだ寝ていないのだ、と思い王子は扉に近づきました。
すると不思議なことに女の人の声が聞こえました。
どうやら道化師と会話をしているようでした。
足音を忍ばせ扉に近づき、隙間から覗き込みました。
王子は息を呑みました。
道化師がベッドの腰掛け、その傍らには本が広げられていました。
その本から腰掛けた道化師の、頭くらいまでの背丈しかない少女が楽しそうにおしゃべりをしていたのです。
少女は光の粒で出来ているのか、体中が光っていました。道化師は化粧も落とさないままで微笑みながら少女に相槌を打っていました。
王子は声を掛けようとして、止めました。
そしてこの日はそのまま部屋に戻っていきました。
次の日も、そして次の日も王子は素知らぬ顔のまま道化師と話をし、彼が部屋に帰るとその後をつけて扉の隙間から覗き見ました。
道化師は部屋に入ると道化服の中から黒い本を取り出し、ベッドの上に置いて広げました。
そして「我が愛するものを見せたまえ、紙の間から、森の奥から、本の中から」と唱えると、姫様は光と共にふんわりと姿を見せるのでした。
「今日は黄色のドレスですね、良くお似合いです。」
「こないだ見せてくれた本のドレスを真似てみたわ。」
「森の中ではいろんな魔法があるんですね。」
「魔法、というよりイメージかしらね。」
「……」
「……」
どれだけ話しても、二人の会話は尽きることがないようでした。
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