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二人の会話を聞くうちに、王子にもそれとなく事情が分かるようになってきました。
少女は今はもう滅んでしまった国のお姫様。道化師は姫を本の中に隠し、肌身離さずずっと守っている。
そして、と王子様はため息をつきました。
姫は、とても美しい。
王妃様が勧めてきた花嫁候補の誰よりも美しいと思いました。いつの間にか王子様は話したこともない本の中のお姫様に恋をしてしまったのです。
何日も何日も王子様は考えました。
そしてとうとう決心をしました。
「今日は森に行く。お前も来い。」
王子様は道化師に言いました。
「あっしは馬には乗れません。」
「大丈夫だ、私の後ろに乗れ。」
そう言って道化師と出会った森に連れて行きました。
泉のところまで来ると二人は馬を降りました。
「お前は私に隠していることがあるな?」
と道化師を問い詰めました。
「そりゃあそうで御座ろうとも。道化というものは会話が命。あちこち沢山のポケットに王子様好みのお話をたんと隠しておりまする。」
「ではその一つを見せてもらいたい。」
「はいはいせっかちな王子様。どれが宜しいですか?空飛ぶ豚の話?それとも首が三つあるヤギの話ですかい?」
「お前が大切にしている姫の話だ。」
道化師はその場に固まってしまいました。
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