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「何も恐れることは無い。私は知っているのだ、そなたが隠している黒い本。その中にもう今はない国の姫が隠れていることも。」 道化師は胸を押さえ後ずさりしました。 逃げようとしているのだ、と気がついた王子は恥ずかしさをかなぐり捨てて言いました。 「私は恋してしまったのだ、姫に!どうか頼む。姫と話をさせてくれ」 道化師は呆然として座り込んでしまいました。 そして考えました。 これは姫様にとってチャンスではないか。この国は強大で平和だ。王子も勉強熱心で優しいお人柄。もしもこの王子が本気で姫様の事が気に入ったのならば、姫様はこの国で王妃として幸せに暮らせるではないか。自分と逃げ回るよりもはるかにいい。 道化師は服の中から本を取り出しました。 「どうぞこちらへ。」 王子を自分の横に座らせると本の栞のページを開きました。 王子は開かれたページを見て驚きました。そこには豊かな森が広がっていました。 それは絵ではなく、今自分たちがいるのと同じくそこに存在していました。     
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