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今宵は満月。
道化師は今まで与えられた衣装の中で最も美しいものを選びました。そして念入りに道化の化粧を施し、いつものごとくぴょんぴょん飛び跳ねながら王子の部屋に行きました。
「王子様、入るでげすよ!」
そこには同じように美しく着飾った王子が居りました。道化師は昼のうちに今宵お姫様を本から解放すると伝えてあったのです。
扉を固く閉め、満月の輝く空が良く見えるようにバルコニーに通じる窓は大きく開けてありました。
ふかふかのカーぺットの上に静かに本を置くと道化はしおりを挟んだページを広げました。
「我が愛するものを解き放て、紙の間から、森の奥から、本の中から。そなたの役目は終わった!」
道化師が両手を広げ月に向かって叫びました。
本からおびただしい光の粒が渦を描きながら昇ってきました。
それは部屋の中を眩しいばかりに輝かせ、光が消えた後にはお姫様が立っていました。
真っ白なドレスに身を包んだお姫様は道化師が本に隠した時よりもはるかに背が高く、また胸も膨らんでいました。
「姫、待ちわびました!」
王子様がお姫様を抱きしめました。
お姫様はまだ現実世界に馴染めないのかぼんやりしていました。
道化師はほうっと息をつきました。
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