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そしてまだ残光が残る本をそっと手に取りました。 お姫様を固く抱きしめる王子と王子にそっと手を伸ばすお姫様を見ながら道化師は少しずつ扉まで移動しました。後は自分がこの場から消えるだけ。 城を出よう。姫様の傍を離れるのは辛いけれど二人を見ているのは心が苦しい。 道化師は目を伏せて扉のノブを握りました。 化粧を落とした道化師はお城の外に出ました。 どこにでもいる青年の格好に姿を変えた道化師は荷物を背負い直すと森に向かいました。 遠くで自分を呼ぶお姫様の声が聞こえたような気がしました。 いや、それは空耳。 道化師は自分にそう言い聞かせながら急ぎお城を離れてゆきました。     
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