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道化師は泉の水を手で掬って口を濯ぎました。
冷たい水が口の中に浸み渡り、何日かぶりに生き返った気がしました。
お城を離れてから早4年。
道化師は大道で玉乗りやお手玉を披露しながらお金を稼ぎ、あちこちの国に行きましたがなかなか落ち着けるところが見つけられないまま月日が経っていました。
何故なら世界は道化師が思っていた以上に争いに溢れていたからです。
今も道化師は戦火に巻き込まれた町から必死で逃げ出してきたところでした。幸いこの国は王様の力が強くて平和だという事を以前から聞いていましたから、ここまで逃げきれたことにホッとしました。
それにこの森はなんだか懐かしい気がしました。
生まれ育った土地となんとなく似た空気がするのです。
ここなら姫様も安心して暮らせるだろうか。
道化師が胸に手を置き、ふうと息を吐いた時、突然声がしました。
「お前、その姿は道化師か?」
声のした方を見ると、白馬に乗った立派な騎士が道化師を見ていました。
道化師は警戒しながらいつものごとくおどけ始めました。
黙ってそのそぶりを見ていた騎士が突然笑い出しました。
「そなた、面白いな。よし決めた。私の城に来い。雇ってやる。」
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