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むかしむかし、あるところに小さな小さな国がありました。 王様が治めるその国は、小さいけれども森と水に恵まれた豊かな国でした。 人々は争いを好まず、誰も武器を持っていませんでした。彼らの大半は優秀な紙職人でした。この国で作られる紙はとても素晴らしく、世界中の国で高い値段で取引されていました。 ペン先は紙に引っかからず、なめらかでインクが滲まない。破れにくく夜灯りがなくてもその紙の白さで文字が読めるというくらい素晴らしいものでした。 でもその技術は門外不出となっていました。 兵隊はお城と国境の回りにはいましたが、誰ひとり、将軍様ですら戦ったことがありませんでした。 王様も平和を好む人でした。 王様はお城の窓から小さな国を眺めては、この平和がいつまでも続きますように、と願っておりました。 王様にはお姫様がおりました。王妃様はとうに亡くなっておりましたが、幸いお姫様はすくすくと成長してお城の中を明るく照らしておりました。
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