安定剤

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「めっちゃ甘いな。これ」 「原田知世は血糖値は気になれへんかもね」 「大吉先生は華丸さんは、あの人らお酒飲むやん」 「血糖値よりもガンマGTPをきにしてるんちゃう」 「だって子供が佐藤健やで。電王やん」 嫁はゆっくりミルクコーヒーを飲んだ。 「おっちゃん、いろんなもんがごっちゃになってるよ」 嫁はアイスをすくっていたスプーンを俺に向けて、ぷらぷら動かした。 「佐藤健の血糖値まで面倒見られへんわ。原田知世のガンマGTPも。でも俺はストレスチェックは陰性になったで」 「でも?なんか知らんけど、おっちゃん薬飲んでストレスチェックの紙書いたんちゃう?だいぶやられてく感じがするけど」 「薬って、ボナロンか、カルシウムの薬やからな。骨粗鬆症予防の薬やから。カルシウム取れへんかったらイライラするからな。ストレス感じるのかもしれんけど、今親知らず抜くのに休薬中やから、飲んでないねん。薬余ってるけどいる?」 「ウチ、はいらんわ。まだそんな歳ちゃう。原田知世はどこいったんよ」 「原田知世は親知らず生えてないやろ。そんな顔ちゃうやん。多分本物はめっちゃ顔小さいで。手のひらサイズやで」 俺は自分の顔の横で右手を開いた。閉じたり開いたりした。 「何してんの?」 「いや、原田知世の顔ってどれぐらいかなって思って、10センチぐらいかな。芸能人やから、薬飲みながらストレスチェックせえへんやろうな」 嫁は俺のおしゃべりを無視し、カバンをから携帯を出して何か調べ物をし始めた。俺は半分以上残っていたコーヒーを、ほとんど一気に飲みきって目をつむって、口を閉じた。 ずっと目を開けていると疲れるのだ。光が多すぎてチカチカして眼と頭が痛くなるのだ。だから時々目をつぶって、深呼吸をし、おし黙る。 心に何も浮かばないか、歌が浮かんで来れば、いい日になる。 自己分析や社会批評などが浮かぶと今日は良くない日ということになる。 今夜のブラジル戦のことを思い出した。 「そういえば今日はブラジル戦やな」 「朝なんかそう言ってたな」 「大吉さん?」 「さあ、誰やったやろう?原田知世ちゃう?」 「なんで・・・やねん・・・」 俺はまたスイッチが切れた。
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