5人が本棚に入れています
本棚に追加
出会い
「…………」
その絵を見つけたのは、本当に偶然だった。その時の俺は先生に頼まれて美術の先生にプリントを渡しに美術室に来ていた――。
ここに来る途中、俺は「なんで、俺はあの時まだ教室に残っていたんだ……」と後悔していた。
理由なんてない。なんか……残りたい気分だった俺は、そんな日が月に何度かある。
俺の名前は『卯野原蒼』。高校二年生でつい先月十七歳になったばかりだ。
いつもであれば授業が終われば、特に理由がないから家にすぐに帰る。そもそも部活動自体、高校では入っていない。
そもそもこの学校では部活に入るのは強制ではない。
まぁ、そんなの担任の先生は知っているだろうから、特に用事もないのに残っていた俺に頼んだのだろう。
どうして残っていたのか……。
それはただ単純に部活動どころか委員会にすら入っていない俺が『青春』を間近に感じたいだけなのかも知れない。
「はぁ……」
しかし、特に用事がない……という事は、つまり『ヒマ』だと言う事だ。
俺としても、断る理由が「青春を感じたいから」なんていう事をそのまま伝えるつもりはない。
そんな事を言えば「変なヤツ」と思われてしまうだろうから。
そりゃあ、いくらでも「待ち合わせしている人がいる」とか適当な言い訳は考えられる。でも、その言い訳を考えるのがそもそも考える面倒くさい。
――その手間を考えたら、先生の言うことに従っていた方がマシだ。
でもまぁ「そもそも先生が行けばいいだろ」なんて事も思ってしまったけど、先生には先生の『事情』があるのだろう。
そういえば、教室に入ってきた時の先生は何やら急いでいた。その開いているはずの片方の手には、大量のプリントを持っていた気もする。
「ああ、そういえば放送も流れていたな」
思い返してみると「会議を行うから先生たちは集まってくれ」と言ったような内容の放送が流れていたような……。
まぁ、俺には全く関係のない話だったから聞き流していたけど……。
「……」
ただ、もしその会議が先生全員参加なら、美術の先生もいないんじゃ……。
最初のコメントを投稿しよう!