出会い

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 確かに、美術科はそれをメインに勉強しているのだから、知識に差が出るのは仕方がない。  多分、俺たちが普通に解いている問題を美術科の生徒のほとんどの人は解けないだろう。  そもそも勉強している事が違うのだからそういった『差』が出るのは仕方のない話だ。  ――それに、コレはあくまで素人が見た感想だ。  でも、今の言葉を聞いた人によっては「何を上から目線で言っているんだ」とか言われそうだなぁ……とは思う。だから、一人である今、小さく言った。 「ん?」  ゆっくりと作品を色々と見ていく内に、俺は一枚の『絵』の前で立ち止まった。 「これは……」  俺が立ち止まった先には、紙一面に描かれた『青空』の絵があった。  その青空はまるで……俺が小さい頃に山の頂上で見たあの『青空』が……この絵で表現されている様に思えた。 「あら? どうしたの、普通科の子がここに来るなんて珍しい」 「……」  美術科の生徒はよく汚れるという理由から、美術室では基本的に白衣を着ている。だから、それを着ていない俺を見てすぐに普通科の生徒だと気がついたのだろう。 「あっ、コレを担任から頼まれて持ってきました」 「あら、わざわざありがとう」 「いえ」 「ところで……」  プリントを受け取った先生はふと横に視線を移した。 「あなた。この絵が気に入ったの?」 「え」  先生が見ていた視線の先には、さっきまで俺が見ていた絵がある。 「きっ、気に入った……と言いますか。なんと言いますか……」 「別に照れなくてもいいのよ。作品に対して、好き嫌いだけで判断してもいいと思うわ。私は……だけど」 「そんなもんなんですかね」 「そんなもんよ。芸術に対しては、自分の気持ちに対して素直になって見ていいと思うのよ」 「自分の気持ちに素直に……ですか」  そう考えれば、俺はこの『絵』が好きなのかも知れない。 「……また時間があったら見に来ても良いわよ? 部活のある生徒が残っている時間までは大抵ここは開いているから」 「……いいんですか? 俺、美術科の生徒じゃありませんよ」  そう言うと、先生は「いいのよ。ここ、部活じゃ使っていないから」と言って笑ったのだった。 「じゃあ、また来ます」 「はーい、コレ。ありがとうね」  俺は軽くお辞儀をしてその場を後にした――。 ◆  ◆  ◆  ◆  ◆ 「……って、あら? この絵。よく見たら名札が付いていないわね。どこにいったのかしら……。また今度、ちゃんと付けておかないといわけないわね。コレを描いたのが誰なのか、知ってもらわないと」  そこから会話が生まれる事もあるという事を先生は知っていた。  もちろん、恥ずかしがる生徒もいるのだが、将来的には自分の名前を売り込んでいかなければならない。  美術の世界で生きていこうと思ったら、そういった時のために、こういった作品の展示は必要で、名札は必要不可欠なモノなのだ。 「よし、ちゃんと準備しなくちゃ」  そう言って、先生はいそいそとその場を後にした。
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